リーダーシップセミナーから日本人に求められるものとは
菱田有修
 2日間のリーダーシップセミナーを受講しての感想は、廣瀬コーディネーターの言葉を借りて言えば「人生を節目」を強く感じたセミナーであった。杉浦正健学長の「志を持ちなさい」や鈴木淳司副学長の「愛嬌」などの言葉は、自分の人生の視野を広げてくれた大切な言葉として私の胸に刻み込まれた。

 日本経団連では、「21世紀に生き抜く次世代育成のための提言」として、(1)志と心、(2)行動力、(3)知力を備えた人材を求めるべきだと提言している※1。企業側は、特にBの知力よりも(1)志と心を重要視していることがなかなか面白い点と言える。日本経団連のいう志とは、将来の目標・礼儀正しさ・積極的に取り組む姿勢と解釈している。しかし、コミュニケーション能力不足など理由から理想とする志と現実とのギャップに悩まされていることが明らかになっている。私も含めて人間は、困難に直面するとおそらく楽な方、簡単な方へ逃げる傾向にあろう。したがって、混沌とする世界的な情勢のなかで日本の未来を切り開くには、強い志が重要なのであろう。

 志をさらに掘り下げてみると、志という字は「心」と「士(サムライ)」とに分けることができる。つまり、サムライの心を持つことが志と言えるのではなかろうか。では、サムライとは何か?司馬遼太郎氏は次のように述べている。「サムライとは何か、と問われれば、自律心である、ひとたびイエスといった以上は命がけでその言葉をまもる、自分の名誉も命を賭けてまもる、敵に対する情。さらには私心をもたない、また私に奉ぜず、公に奉じる、ということである。※2」
司馬遼太郎氏が、小泉前首相が総理大臣になる前にテレビに映る小泉前首相を見て剣客と評したことは、サムライの心をもう既に見抜いていたのだろう。また、杉浦学長が例に挙げた、そごうの再建に尽力した和田繁明氏の「逃げるな、ごまかすな、あきらめるな」という言葉もサムライの精神が宿っていると言えるだろう。すなわち志とは、困難に立ち向かう、逃げない心である。

 「志」や「逃げるな、ごまかすな、あきらめるな」という言葉を実行するには難しいのではないのかと思っていた。しかも誰しも困難に直面すれば憂鬱になるであろう。そこで廣瀬コーディネーターのアドバイスが目の前の視界を広げてくれる。それは、鈴木副学長の言葉「愛嬌」を引用して笑顔と感謝の気持ちを表すことの2点を薦めたことである。さらに、院生一人が職場でのこの笑顔と感謝の気持ちを実践したことにより業績アップばかりでなく、職場の雰囲気も明るくなったという報告を受けたことも説得力ある大きな支えにもなった。

 一つの行動が周りをよい方向へ巻き込む影響力がリーダーシップであり、それは自らのあり方で決まる。それは、リーダーといわれる人だけでなく、私たち一人一人が備えるべき能力(志)であろう。


※1:社団法人日本経済団体連合会「企業の求める人材像についてのアンケート結果」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/083.pdf

※2:司馬遼太郎著「明治という国家」日本放送出版協会、1989年254頁。