| 麻生大臣の言う「働く」という価値観から見えること
菱田有修 |
| 外務省は、平成18年11月に日本外交の新機軸として従来の基本路線(日米同盟・アジア周辺地域の強化)の上に「価値の外交」と「自由と繁栄の弧」を打ち出した 。それは、自由・民主主義・基本的人権・法の支配・市場経済という日本がこれまで培ってきた価値観を諸外国に取り入れることで経済的発展と地域の安定を目指すものである。資源のほとんどを海外に依存している日本にとって、諸外国の地域の安定は不可欠であろう。では、一体何をするのか?そこで、麻生外務大臣は、インドの鉄道事業(デリーメトロ事業)への日本技術者派遣を例に挙げ、日本の「働く」という価値観を現地の人たちと共有することの有益性を強調した。働く環境を世界に提供するという大臣の独特な切り口は、興味惹かれるほどの説得力ある講演であった。 また、麻生大臣が例えたインドでのデリーメトロ事業の日本人の「働く」というエピソードに京セラの名誉会長である稲盛和夫氏の言葉を思い出した。それは、海外で事業を進めていくのに一番大事なのは、権威や経済力ではなく、現地の人たちから尊敬や信頼される人間性すなわち人格である と述べている。インドの現地スタッフは、日本人の働く姿勢に尊敬に値する人格を見たからこそデリーメトロ事業が納期厳守・正確な運行で成功しているのであろう。 一方「働く」というキーワードで国内に目を転じれば、入社3年以内の離職率の増加という問題が起きている 。その離職理由についてみると,「個人的な理由」が最も高くなっている。自分の可能性とキャリアアップを目指して早いうちに離職を決断するというプラス思考の見方もあるが、むしろマイナス思考の見方が現実的であろう。財団法人経済広報センターのアンケート結果によると、若年層の辛抱のなさや「働く」意義が見いだせていないという理由が大半を占めている 。いずれにせよ、若年層の労働力不足と不安定さは、企業にとっても、国にとっても大きな損失であることに間違いはない。 こうした早期離職を防止するため新卒者に対するサポートやインターンシップの拡充などの短期的な対策が企業を中心に行われている。そこで、長期的な視点に立ち、小さい頃から「働く」意義を見いだす対策が行政と社会に求められるであろう。その一つとしてODAを活用して海外研修を教育の一環として取り入れてはどうであろうか。国内での体験学習にとどまらず、あえて厳しい環境に身を投じ、現地の人たち協調作業することで「働く」という人間力が養えると考える。そうなれば「Work Culture」が今後の日本の真の輸出産業となり得るのかもしない。 参考文献 外務省:平成19年(2007年)版外交青書のあらまし http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2007/pdfs/2007.pdf |