「少子化問題の一考察」
林 隆司
 8月講座の際に配られた参考資料を見て、私は驚いた。なぜなら、ここ数年間に渡り減少していた婚姻数と出生数の速報値が昨年と比べ今年は増加に転じていたからである。講演の際、猪口邦子少子化担当大臣が、ある財界人の話として「(出生数と婚姻数が増加に転じた)理由は少し景気が回復したからだ」と述べていたが、常々「少子化の原因は経済問題にある」と思っていた私はこの話に大きく頷いた。

 2004年度の「少子化社会白書」を参考に作成した資料によると、夫婦が持ちたい子供の数は2002年は2.31人であった。また、25年前の1977年の同様の調査における理想の子供の数は2.42人であり、ほとんど変化していない。一方、現実に生まれた子供の数を示す出生率を見ると、77年が1.8人であったのに対し、04年は1.32人と著しく減少しており、持ちたい子供の数における、理想と現実にギャップがある事がわかる。では、「なぜ、理想の数の子供を作らないのかと」との問いに対して、実に62.9%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と答えている。この事から、「子供を産まない(産めない)」大きな理由として、「経済的問題」がある事がわかる。

 また、出生率低下の理由としては婚姻数の低下、すなわち「非婚化」が挙げられる。厚生労働省の外郭団体「労働政策研究・研修機構」の調査によると15歳から34歳までの男性の結婚率を見た場合、正規社員では40.4%であるのに対し、フリーターや契約社員などの非正規雇用では13.5%に留まっている。これらの「非正規雇用」の年収は平均して200万円から300万円の間であり、多くても400万円が限度である。一方の正規雇用の年収は300万円から600万円の間である。この事から少子化の原因の一つである「非婚化」の原因として「経済的問題」が大きい事がわかる。すなわち、以上の2点から考えて「経済的問題」が解決すれば、出生率はかなり改善される事が推測出来る。

 この「経済的問題」を解決する手段として、まず、児童手当の大幅な拡充を提案したい。先ほど述べたように、6割強の夫婦が「経済的問題」を理由に子供を増やすことを躊躇している。ならば、行政からの補助の金額が増えればこれらの人は子供が増やせる事となる。現在の児童手当は子供が1人の場合は月額5000円で年額6万円、2人の場合は倍の年額12万円、3人目は月額10000円に増額されるため1人年額12万円で、3人合計で24万円となるが、これでは余りに少ない。4月講座の際、久間章生総務会長が述べていた様に「1人年額100万円」でも多すぎないと思う。また受給期間についても、現在は小学校修了までとなっているが、せめて義務教育である中学校修了まで延ばすべきであろう。この児童手当拡充の財源としては、介護保険料の様に一定年齢の(例えば30歳以上65歳未満)全ての人に負担してもらうのが「子供は家庭だけでなく、社会全体で育てる」という観点からも望ましいだろう。

 もう一方の「非婚化」の解消策としては、雇用条件の整備に尽きる。正規雇用と非正規雇用の収入格差の是正などにより、経済状態が改善され、低収入を理由に結婚を躊躇している人が結婚すれば、これらの人は子供を作り出生数は上がる。

 これらの政策を実行するには、省庁横断的な取り組みが必要となって来る。今回出された少子化対策では「経済的問題」は余り触れられていない様に感じられた。新政権にはこの問題に取り組んで頂きたい。

※参考文献
「日本の論点2005」「日本の論点2006」文藝春秋社
「しんぶん赤旗WEBページ」http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-08-24/2005082404_01_2.html