竹中大臣の「経済主義」への転換が意味するもの
菱田有修
 竹中大臣は、講演で今回の骨太の方針が以前のものと違う評価すべき点とし3つ挙げた。(1)財政健全化に結論を導き出したことで分厚くなったこと。(2)財政健全化の手法が「財政主義」から「経済主義」に転換したこと。(3)揉めなかったこと。以上3点のうち私は、(2)の経済主義への転換が重要なポイントと思う。@とBは、改革の道筋が最終段階に入ったことや事前準備によるものであったりする。しかし、(2)はこれまでの常識を捨てた新たなチャレンジと言える。

 日本は、これまで景気対策と称し国債を発行し、公共事業に充てる政策が行われてきた。そのため、累積赤字が増えるばかりで景気低迷が続いた。平成16年度の日本の公共事業は、対GDP比で3.6%。他の先進国は、高くてもアメリカ・フランスの1.3%と日本の半分以下である。比率が高いのに景気回復の効果がないことは、不必要な事業が多いことを物語っている。

  竹中大臣の言う問題解決を財政で行う財政主義と決別し、経済成長の基での政策(経済主義)を採用しようとする理由がここにあろう。安易に増税をせず、経済を活性化させる規制緩和や政府資産の解放で財政健全化は果たせるであろう。ここで忘れてはならないのは、プライマリーバランスの黒字化は平成23年度であって、それまで累積赤字は続いていることである。危機的状況に変わりはないことは、肝に銘じておきたい。

  その財政健全化のためには、増税は避けては通れない道である。しかも、税制には理念と効果が求められる。例えば「貯蓄から投資へ」の流れを加速するため平成15年から証券税制が導入された。その結果、貯蓄中心型からバランス型の資産形成がされ、株式市況の好調を背景に税収も膨らんだ。減税政策にも関わらず、「貯蓄から投資へ」という理念と増収という効果が得られ、経済をうまく利用した経済主義と言える。

  しかし、この優遇税制が平成19年に期限を迎える。財務省は、元の税率に戻すと主張している。経済界からは、「貯蓄から投資へ流れに逆行する」「駆け込み売却で株式市場の混乱を招く恐れがある」などの声がある。財務省は、財政健全化を大義に理念と効果を無視しようとしている。各省庁と連携した税制で経済をどのように活性化させるのかが課題なのに残念である。

 昨年の衆議院選挙は、小さな政府が争点となった「政策の選択」であった。今年の総裁選は、リーダーに誰を選ぶのか、どのような政治体制で望むのかが争点となる。つまり、「政治の選択」である。骨太の方針が閣議決定されたことで次の内閣は、この方針に沿って政策が実行される。経済主義への転換は、「官僚主導型」から「内閣・党主導型」へ転換とも伺える。ならば、党や政治家はさらに政策に明るく、官僚の主張に屈しない者が舵取りを行うであろう。

【参考文献】
財務省「わが国税制・財政の現状全般に関する資料」