小さな政府における産学連携
下方 郷嗣
 近年、産学連携という言葉をよく耳にする。大学の研究成果を社会に還元する為の支援をしようという話である。技術大国日本を目指す姿勢は多くの国民が支持するところであり、基礎研究を推進する大学と技術の実用化を担う民間企業との連携は必要不可欠である。しかし、ここには省庁間の熾烈な予算獲得競争があり、獲得した予算を消化する為に大学に起業を促している構図が見え隠れする。産学連携の為に計上された本年度の予算は総額7,000億円にものぼり、一般会計の1%を占めるに至っている1)。その実態は、税金が有効に使われたかチェックする機能が乏しいばかりか、事業に失敗しても責任は問われず、採択されれば潤沢な資金が投入されるだけであり、まさにノーリスクハイリターンである。

 産学連携の為に使われる費用は言うまでもなく我々の税金であり、そこには所得税、消費税などの他に法人税も含まれる。言わば、民間企業から集めた税金を省庁管理の下に再分配しているとも捕らえる事ができる。それならば、省庁を迂回せずに民間企業が大学に直接研究費を投資する仕組みにした方が効率的ではないか。つまり、法人税の一部を大学の研究費に当てる事ができる税額控除制度を確立するのである。企業にとっては税金を納めるか大学に研究費を納めるかの二者択一になるので、必然的に大学と共同研究する道を選ぶようになる。研究開発型の企業であれば日頃から大学で行われている先端研究の動向はチェックしているので、提携先を選ぶ事には新たな労力を伴わない。また、大学とのパイプを太くする事ができ、共同研究による情報交換や人材交流が積極的に行われるようになって、自社の開発能力を高めるきっかけにもなる。

 大学側にとっても、また、納税者にとってもメリットは多い。まず、研究の要となる知的財産を企業が権利化し利益の分配法をあらかじめ決めておく事で、大学側は不得手である会社経営に余計な手間をかける事なく研究に専念する事ができる。また、同じ専門分野を共にする企業と研究室ならば研究の内容を正当に評価する事ができ、計上した予算が適切かどうか事前にチェックできるようになるので、無駄な税金を使わなくてすむようになる。さらに、大学側は予算獲得の為に今まで以上に情報公開に積極的になる事で大学間の競争が加速され、自ら研究の質を向上させようとする姿勢がより強くなる。

 今までのような政府主導でなくとも、民間主導でより効率的な産学連携が可能なのである。基礎研究に卓越した大学と製品化のノウハウを持つ民間企業が連携を深めれば、お互いの得意分野を活かしたシナジー効果が期待できるのである。必要な事は民間主導で技術開発が促進されるように法体系を整える事であり、それは少数精鋭で実現可能なはずである。これこそ小さな政府における産学連携の姿ではないだろうか。

参考文献:
1) Nikkei Business 2005年11月14日号