中川政調会長の「上げ潮政策」から見えること
菱田 有修

 9月の総裁選挙を見据えて次の政策が混沌としているなか、中川政調会長の講演を聴講できる機会に恵まれたことは、大きな意義があった。中川氏は、今年1月ダボス会議において「上げ潮政策(Rising Tide Policy)」を掲げた。その内容は、インフレターゲットの導入と日銀との協調で高い名目経済成長率を実現していくものである。この政策を知って、私は次のステージに進んでいくまた新しい日本の未来を感じた。

 小泉純一郎氏は、郵政民営化を第一目標に総理になった。そして、「改革なくして成長なし」をスローガンに実行させた。政治生命をかけて公約(コミットメント)を果たしたのである。当然、ポスト小泉も大きな目標と実行能力が不可欠となるであろう。そのような状況で中川氏の「上げ潮政策」は、改革路線を押し進め、これからの日本の戦略(ストラテジー)を明確に示したと言える。

 内閣府の日本21世紀ビジョン(1)では、経済成長率は、1%台半ばである。果たして同レポートに掲げる2030年の日本は、明るく豊かであり得るのか疑問であった。確かに、発表された05年度はデフレが続き、景気回復といえない状況では、保守的にならざるを得ないかもしれない。しかし、中長期ビジョンを示すなら、強気であってほしかった。1.5%か3%の違いは25年後大きな差となって現れる。国家財政・年金だけでなく、国民の生活水準においてでもある。最近問題となっている格差社会の是正は、なおさら困難であろう。

 中川氏が例えた「日本経済は、ジャンボジェット機のようにまず前輪から上がり、次に後輪も上がって離陸していく」は、まさに同感である。これから地方や中小企業の力が試されているこの時期に格差論で改革を批判するのは、政局絡みや日本独特の妬み文化の象徴ではなかろうか。ジャンボ機やダンプカーなどの大きなものを動かそうとすると、初めはなかなか進まず大きな力がいる。そのうちゆっくりと進み、さほどの力も必要なくなる。これと同じ現象が今の日本経済にも起こっている。これから青空に向けて旅立とうとする力を緩めてはいけないのである。大切なのは、国民の力が同じ方向に向けることであろう。

 また、高い成長率を保つには、日銀との協調政策が何よりであろう。日銀の独立性という問題はあるが、長期金利を名目成長率に比べて低い水準に保つ政策は、実現していただきたい。日銀は金融引き締めを急ぐ傾向にある。むやみな利上げは、金利負担が重しとなり、財政圧迫に繋がる。70年代の狂乱物価や90年代のバブル崩壊を長引かせた政府と日銀との不幸な歴史を繰り返さないでほしい。政府と連携し、日銀の迅速かつ柔軟な対応ができれば、20年弱での所得倍増計画だけでなく、財政再建・格差社会の是正は可能であろう。

 以上のように、「上げ潮政策」は改革路線を加速させ、日本の将来を豊かにする政策と言える。次のリーダーは、命を懸けて政策を実現すべきであるし、そのように信じている。かつての池田内閣の所得倍増計画のように大きな目標に向けて日本国民は、努力していくべきである。私たちは、ジーコジャパンのサムライブルーのごとく日本社会を見通しのよい青空にしていかなければならないと感じる。

【参考文献】
フィナシャルジャパン2006年6月号

1) 日本21世紀ビジョン http://www.keizai-shimon.go.jp/special/vision/