| 題 :米軍再編に対する日本側負担について 氏名:松本卓久 |
| ■負担総額3兆円という数字 在日米海兵隊のグアム移転経費問題は4月23日に日本側の負担が全体の59%(約7000億ドル)という事で合意がなされました。それに対し財務省が「防衛予算全体が膨らまないように別経費の圧縮を防衛庁に求める方針だが同庁が反発するのは必至だ※1」と負担額およびその財源問題をクローズアップ。さらにそれに追い討ちをかけるように4月25日にローレス国防福次官が「在日米軍再編での日本側負担が約3兆円に及ぶ※2」と述べた為、移転経費の内容ではなく負担額が一人歩きするようになってしまいました。 ■3兆円の背景にあるもの マスコミでは「社会格差と財政赤字の問題を抱える日本が米国の言いなりに負担する是非」「少子高齢化社会の到来に対する財政再建への不安」それに「そもそも米軍の再編になぜわが国が経費負担をするのか?」と言うような論調が多く提起されています。これらは現時点の報道に対する問題点としては的を得ていると思えます。ただ、ここで再確認すべき事は「日本が防衛に関して米国側へ完全に依存しているという現実」です。 例えば基地や演習地の騒音問題等を考慮して対空ミサイル訓練はテキサス州※3、機甲師団の演習はワシントン州※4で実施されています。自国領域内で訓練さえ行えず、さらに確実に日本に向いているミサイルに対する具体的な対抗策を取る事にさえ疑問や批判が沸き起こり、その結果在日米軍に頼らざるを得ない日本の防衛体制。これこそ今回の巨額な予算要求の背後に存在するものだと思われます。 また志方俊之氏は「日本は核抑止力も周辺地域に対する戦力投影能力も米国に『負んぶに抱っこ』で周辺事態が起きても自衛隊は後方支援のみで出動せず、命がけで闘うのは米兵だ※5」と現状を分析されています。自国のみならず同盟国の防衛に命をかける事を求められる米兵隊およびその家族の立場に立ってこの問題を考えた場合、日本側への負担率の増加を求める声が挙がるのも当然であると考えられます。 ■自国の防衛を他国に依存する体制からの脱皮 今回の米軍再編の大きな要因は極東アジアの軍事力のバランスとその背景にある北朝鮮および中国問題であると思われます。建国以来、陸軍中心の国家であった中国の航空母艦建造問題※6や人民解放軍主導の宇宙開発等は日本として看過できない問題です。サンフランシスコ講和条約後の吉田茂首相がいみじくも在日米軍を「番犬」に例えたように、その番犬に守られながら復興のパワーを経済発展に注ぎ込み現在の経済大国になった日本。今回の事例から、従来のような「防衛を他国に依存することがいかに高価なものになるか」という国際社会の常識をよく認識すべきだと思います。そして国家戦略に基づいた独自の防衛システムを構築する事が、どこの国とも対等な関係を保てる「品格のある国家※7」となり得る第一歩であると思います。 ※1「グアム移転費、財源めぐり「難題」噴出 財務長と防衛庁」朝日新聞東京版朝刊・平成18年4月26日 ※2「米軍再編 日本負担3兆円」産経新聞東京版・朝刊 平成18年4月27日 ※3テキサス州フォートブリスのホワイトサンド・ミサイル実験場 ※4ワシントン州ヤキマ演習場 ※5志方俊之「軍事研究『沖縄駐留海兵隊のグァム移駐経費の分担から学ぶ』潟Wャパン・ミリタリー・レビュー 平成18年5月号 p.37 ※6台湾当局は2006年1月19日に「大連で艤装中のヴァリヤーグは(軍艦用の)灰色のペイントも終え、修理がほぼ最終段階に入った事を偵察衛星の写真などから確認した」と発表している ※7「国家の品格」新潮新書No.141 新潮社平成17年11月20日 p.186 |