題 :木村防衛副大臣との対話を踏まえて
氏名:松 本  卓 久

■六カ国会議の成果による雪解けムード
 2007年2月16日金正日総書記の誕生祝賀は「重油支援が盛り込まれた6者協議の合意文書採択は祝賀ムードに花を添えた」(※1)という状況下で行われました。北朝鮮当局が六カ国会議の合意が北朝鮮のエネルギー問題と食糧難を解消し、体制崩壊を食い止められると受け取った為と思われます。体制の安定化は彼らを交渉のテーブルに引き戻し朝鮮半島非核化の問題解決に向けて一歩踏み出したようにも思われます。また弾道ミサイルに関しては木村副大臣が今回の対話で述べられたように「ミサイル発射は衛星によりモニターされている。そして万が一発射された場合は迎撃ミサイルで対抗する。日米同盟により日本は守られているから朝鮮は迂闊なことができないだろう」という状況で拉致問題は進展していないものの我が国にとっても当面の核危機は回避されたように一般に受け取られているようです。

■依然懸念される弾道ミサイル問題
 ただ今回の合意により北朝鮮が弾道ミサイルシステム自体を廃棄する事は有り得ないと思われます。それ故、我が国は対抗策である迎撃ミサイルシステムの確立を急ぐべきです。しかし現在配備が進んでいるSM3では残念ながら防衛庁筋から「第二次大戦中に竹やりで爆撃機B29を落とそうとしたような話」(※2)という指摘も出ています。また現状の人工衛星による監視システムは万が一の場合にどのくらい効力があるのか疑問に思われます。それは弾道ミサイルが実戦配備をされる場合は地下基地から発射されるのではないかと推測されるからです。実際に韓国の政策研究機関「外交安保研究院」の報告では「咸鏡南道の虚川郡と徳城郡に建設中のミサイル基地はすでに70%以上完成」(※3)と言われています。ミサイル基地が地下に設置される場合、衛星からの監視だけでは発射情報を入手する事は困難だと思われます。

■防衛および対外情報システムの充実と監視体制の確立
 北朝鮮に対しては今後とも拉致問題を含めた外交交渉をする事がまず大切です。そして最終目標は朝鮮半島の非核化です。しかし現状では日本は対外情報機関を充実させミサイル基地の正確な位置および稼働状況も常に把握しておく必要があると思います。それに加え迎撃ミサイルシステムの精度向上を図る事も必要です。また日本の商社などを通じ軍事技術の北朝鮮流入を監視および防止する必要もあります。1993年に「日本の古鉄取引業者からロシアのフォックストロット級及びゴルフ級ミサイル潜水艦12隻を古鉄として購入」(※4)という事例があります。このゴルフ級潜水艦は弾道ミサイル発射システムを搭載しており、それを基に北朝鮮が船舶からのミサイル発射システムを開発したと言われています。(※5)  今後、北朝鮮との関係が改善した場合に於いてもミサイル防衛システムの早期構築、対外情報機関の充実に努めると共に、北朝鮮向けのあらゆる物品について徹底的に監視体制を敷く必要があると思われます。

※1「金総書記、65歳祝賀と対米警戒」朝日新聞朝刊2007年2月17日

※2「高い技術不可欠、万能といえず ミサイル防衛システム」産経新聞2006年12月20日

※3「北朝鮮が地下ミサイル基地70%以上完成 韓国報告書が指摘」読売新聞夕刊2006年8月3日

※4 「北の艦艇ミサイル、テポドンより驚異的」朝鮮日報2004年08月4日

※5「The Golf-IIs, which are capable of carrying three SS-N-5 SLBMs, did not have their missiles or electronic firing systems when they were sold to the North Koreans, but they did allegedly retain significant missile launch sub-systems including launch tubes and stabilization systems. Some analysts believe that this technology, in conjunction with the R-27’s well-understood design, gives North Korea the capability to develop either a submarine or ship-mounted ballistic missile.」North Korean Ballistic Missile Threat to the United States」
 CRS Report  for Congress, Updated July6,2006  http://www.usembassy.at/en/download/pdf/north_korea_missile.pdf