「日本の未来を、もう他人任せにしない!」という精神
菱田有修
  今回の講座である国会議員との対話は、まさに対話というだけあって国会議員と院生とが膝を交え議論ができたことに大変感謝している。囲碁の世界に「着眼大局、着手小局」という格言がある。常に碁盤全体を眺めながら、着手は細心の注意を払い小さな一手から実施するというものである。今回の対話で感じた大局と小局は何か?を考えてみたい。

 防衛副大臣である木村隆秀先生からは「日本の防衛のあり方」について、自民党道州制調査会長である杉浦正建先生からは「道州制への取組み」について両氏の懇切丁寧な説明があった。これまでの国と国との安全保障だけでなく、テロとの安全保障も想定しなければならない日本の防衛システムは、どのように実行していくのか。究極の地方分権といわれる道州制で日本はどのように変わり地方は何をすべきなのか。いずもこの10年が変革期に突入したという大局が見えてきたことである。

 では小局とは、この取組みに対して理解と協力が得られるよう国民の意識を高めることが先決であろう。リーダー(先導者)の説得力で多数のフォロアー(追随者=国民)に大きな流れをもたらすことが鍵となると考える。なぜなら、中日ドラゴンズの監督、落合博満氏が就任1年目に選手の大型補強せずにリーグ制覇した背景にヒントがある。落合監督は、今いる選手の能力をあと5%アップさせるだけでチームを優勝さることができるとして、補強を断った経緯がある。選手は猛練習でレベルアップをし、チームは見事優勝し、その理論を実証させた。この落合監督の理論が、これからの日本社会にも当てはまるのであろう。すなわち、私たちフォロアーの能力を高めることで、全体の底上げに繋がり、個人のポテンシャルを発揮できるような社会、努力が報われる社会が実現できるというものである。その現れが平成19年2月に政府が発表した「成長力底上げ戦略」(※1)が良い例であろう。

 ただ意識が高いだけでは、良いというものではないようである。国際協力機構(JICA)理事長の緒方貞子氏は、常に全体のことを考えることができるリーダーとは違い、フォロアーとは自分のことだけ考える傾向にある(※2)と指摘している。メディア報道は、すぐに私たちの生活にどう反映するのかという目先の損得だけを伝えてしまう。当然、フォロアーも短絡的に誘導されてしまう恐れがある。そうすると重要な案件にもかかわらず、進んでいかない事態に遭遇するであろう。

 そうならないためにも愛知政治大学院の「日本の未来を、もう他人任せにしない!」という精神がフォロアーに根付くことが必要であろう。その精神には、緒方氏が言う常に全体を捉えることができるリーダーの要素が盛り込まれている。私たちフォロアーは、自己中心に偏らないリーダーの資質を取り入れることで、この変革期に対処できるのではなかろうか。

※1「成長力底上げ戦略」http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou/dai1/1gijisidai.html
※2緒方貞子編「転機の海外援助」日本放送出版協会、2005(平成17)年、48頁。