表題:駐日米国大使館首席領事の講演を拝聴して:日米同盟と中国の台頭
氏名:松 本 卓 久
■ 中東問題に縛られる米国と経済発展・軍事増強を続ける中国
 ジョセフ・R・ドノバン首席領事は「日本への攻撃は米国への攻撃とみなす」と安全保障の面から日米同盟の重要性を明言されました。ただ講義全般からの印象では現在の中国に対する米国のスタンスを伺い知る事ができたように思います。

  現状のブッシュ政権としては「イラク問題をいかに成功裏に終わらせ、かつイランの核問題をどのように平和裡に処理するか」が最大の課題となっているようです。そのような状況下で北朝鮮の核問題等の東アジア問題に関して米国が現在以上に関与する事は困難であると思われます。そこで米国に代わって東アジアを取り纏める国として脚光を浴びるのが中国です。中国は経済発展にも力を注ぐ一方で着々と軍備増強を進めています。これは米国と軍事的対立を続け最後に崩壊した旧ソ連とは大きく異なります。なぜならば今後も経済発展を進める為に中国は米国や欧州そして日本と友好的関係を築いていかなければならないからです。

■ 一党独裁国家中国がアジアの盟主になる危険性
 2006年度の中国の国防予算を約2,807億元、前年度比14.7%の増加(※1) と公表していますが、米国務省の推定ではそれ以上の割合で増加していると考えられます(※2) 。ワシントンでは中国に対し「『戦略的競争関係(Strategic Enemy)』という言葉を使っている。だが「友だち」というよりは「敵=Enemy」にあたる (※3)」と見なし警戒感を抱いていると言われています。しかし同時に「中国という巨大市場がアメリカの金融資本のもとに置かれるようになり、中国の市場全体がアメリカのものとなったと思っている」(※4) という楽天的な思い込みから、米国が中国を「友好国」として扱う傾向にある事も否めません。しかし隣接する東アジアの国々にとって経済的にも軍事的にも肥大化する中国の脅威は計り知れません。

■ 日米同盟の活用と対中国政策の確立が必要
 日本は米国の同盟国として、当面は中東方面の米国を積極的に支持し米国が東アジアへ戦略をシフトし易くする戦略を立てる必要があると思います。そして同時に中国の台頭を抑える為に中国の背後に位置するロシアとの交渉を再開する必要があると思います。経済的には、「東西回廊」の完成が近づき、今後期待が持てる東南アジア地域に日本企業を中国からシフトさせる計画をも具体化すべきです。

 ただ北朝鮮に対抗して日本が現状で核武装する事はNPTを脱退し国際的に孤立する恐れを考慮すると不可能だと思われます。しかし「核」に対抗する為にも徹底的に核兵器についての研究を推し進め、特に原子力潜水艦とSLBM (※5)の研究には速やかに着手すべきだと思います(※6) 。

 近い将来一党独裁国家は北朝鮮のみならず中国も必ず瓦解すると思います。それに備え日本は日米同盟に沿って中東政策を支援すると同時に東アジアに自由と民主主義が根付くようにこの地域を安定させる役割を担う覚悟を決める必要があると思います。

※1 第一章:わが国を取り巻く安全保障「平成18年度版防衛白書」
※2 米国防省「中華人民共和国の軍事力に関する年次報告」(06年5月)は、中国の実際の国防費は、公表数値の2倍から3倍と見積もっており、海外からの兵器調達、人民武装警察、戦略部隊(核・ミサイル)、国防産業に対する補助金支出、国防関連の研究開発費、予算外収入(軍のビジネスが一部残存)が公表国防費に反映されていないと指摘している。
※3 「アメリカに追いついた中国が仕掛ける『2020年米中激突』の恐怖」SAPIO,2007.01.24
※4 「日本よアメリカのアジア離れを覚悟せよ」日高義樹、正論2007年1月号、産経新聞社
※5 SLBM:潜水艦発射弾道ミサイル (Submarine Launched Ballistic Missiles)
※6 高井三郎氏によると日本の核武装のためにはSLBM16発搭載の原潜が12隻体制が必要との事である「大陸の目標に対する核武装攻撃:物理的可能性の研究」軍事研究、2007年2月号