| 題名:「都市集中」と「国土の均衡ある発展」、どちらが環境に優しいのか? 氏名:石井航 |
| 11月講座は愛知県環境部の林部長が21世紀の環境政策について講義をされた。その中で様々な問題が取り上げられたが、中でも1960年台から深刻化した産業公害の被害は最大であり、1970年の田中角栄内閣以降、我が自由民主党が推し進めた「国土の均衡ある発展」を目指す経済政策と無縁ではない。そこで本論では、当該政策が環境に与えた影響を検証し、昨今人口移動により進展しつつある「都市集中」との比較を行いたい。 田中角栄は著書「日本列島改造計画」で著したように、大都市圏に集中している利権を全国均等にばら撒いていけば、いずれは全国各地に農村工業が勃興すると信じ、積極財政を展開した。残念ながらその結果は惨憺たるもので、新産業都市、臨海埋立地への重化学工業誘致、リゾート振興施設などのためにばら撒いた金が積みあがり、今や国と地方の日本国民に対する借金の総額は700兆円に上っている。 この政策と公害の間には深い関係があると私は考える。本当に悲惨な被害者を多数出してしまった4大公害訴訟の内、特にチッソという名門企業を誘致したことで発生した水俣病は、政策的な重化学工業の誘致が公害を引き起こした典型である。被害が広がった最大の原因は、人体や動植物に深刻な被害が報告されているにも拘らず、自治体による認定が発生から約15年後と大幅に遅れたことである。その原因は、チッソに出て行かれたら地域経済がガタガタになることを恐れ、自治体および当該選挙区選出の政治家が、チッソが垂れ流した水銀は関係ないというチッソ側の主張を追認し続けたからだと私は考える。需要がないにも関わらず、票集めのために工場を都市から地方へ追い出し、地域経済を一社に依存させた政策が、水俣病の被害を拡大させた最大の要因となってしまった。 都市部の公害としては、ご当地名古屋の新幹線騒音訴訟が挙げられる。昭和39年の営業開始直後からテレビの受信障害や騒音が発生したことを受け、地域の住民たちは国鉄を相手取り、昭和49年3月に「名古屋新幹線訴訟」を提起した。たしかに、チッソ同様、新幹線も国策として行われた政策である。しかし名古屋市という都市部においては、国鉄といえども地域経済を一社で牛耳ることはできず、行政、住民、経済界など多様な角度からの監視の視線が強かったことが、被害の拡大を食い止めたのではないだろうか。 地方から東京圏への人口の純移動が、2001年にバブル絶頂期以来12年ぶりに10万人の大台を突破した。また1990年代末からは、国土交通省が「経済効率を重視した大都市中心の国土政策」への転換を図っている。均衡ある国土の発展から都市再生への転換をはかり、4大公害問題の教訓を活かす形で、廃棄物処理や温暖化など現代の環境問題に取り組むことが、ばら撒き財政を自ら推進した我が自由民主党の最大の責務である。 参考文献: 1970年体制の終焉 原田泰 東洋経済新報社 高度成長の時代 香西泰 日本評論社 日本列島改造論 田中角栄 日刊工業新聞社 高度経済成長は復活できる 増田悦佐 文春新書 |