| エコロジー偏重主義からの脱却 菱田有修 |
| 今回の講座は、行政側からの視点で新たな発見が見いだされた内容だった。愛知県環境部長の林氏によるフェロシルト問題の実体や質疑応答による地球温暖化対策の弊害を知ったことで、今の日本の環境に対する風潮に一石を投じてみたい。 最近の企業は、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)が重要視されている。なかでも環境の分野については、企業ブランドを形成する主要なファクターとなっている。また、小泉元首相が、平成16年のG8サミットにおいて、資源の有効利用を通じて環境と経済の両立を図る3R(※1)(廃棄物の発生抑制(リデュースReduce)、再使用(リユースReuse)、再生利用(リサイクルRecycle))通じた循環型社会の構築を目指す「3Rイニシアティブ」を提案したように世界的な風潮にもなっている。まさに、エコロジー主義である。 このエコロジー主義の看板と実体が一致していれば、環境を通じて社会も企業も相互の信頼関係は構築できるはずである。しかし、林氏から今回問題となったフェロシルトの実体と経緯の説明を聞いてみると、一部上場企業によるエコブランドを利用した悪質な犯罪であると実感した。つまり、フェロシルトを関連会社に販売価格以上に奨励金を支給し販売した現状(逆有償性)をみれば、リサイクル品と称して産業廃棄物を処分しているのと同一であることが認識でるからである。行政の公認リサイクル品と称してまで正規の産廃処理にかかるコストを回避し・逸脱した行為の社会的責任の重さは、計り知れないだろう。 また、質疑応答で地球温暖化対策として夏場の設定温度が取り上げられた点は、環境行政に携わる人たちの苦労が伺えた。それは設定温度を28℃にすることで、時には室温が30℃超となることもあり、体調不良や業務効率が損なわれるという問題である。同じようなことが環境省の庁舎でも起こっていると聞く。環境行政として先頭に立ってアピールし実行をして様々な弊害があっても、優先すべき課題なのかと考えさせられる。京都議定書の締結内容に議長国としてのプライドもあるかもしれないが、支障を来さないできる範囲内での地球温暖化対策を見直してはどうであろうか。 環境に対する意識が高くなっていることは、大いに結構である。しかし、エコロジーを訴えることで企業価値を向上させたい企業側や環境立国を押し進めたいとする行政側に、行き過ぎたエコロジー主義が蔓延してはならないと思う。企業も環境への取り組みを全面に打ち出すならば、実体が伴っていなければならないだろう。行政も職員の健康管理・業務効率といった点を加味した上での環境政策を実行しなければならないだろう。すなわち、エコロジー(環境)とエコノミー(経済・効率)とがバランスされてこそ、日本が目指すべき環境立国ではなかろうか。 (※1)http://www.env.go.jp/recycle/3r/outline.html |