題:少子化について考える
氏名:中村 健
 昨今、少子(高齢)化という言葉を耳にする機会が多くなった。それと共に、早急な対策の必要性も盛んに言われている。事実、2005年のわが国における合計特殊出生率は1.25であり、人口を維持するのに必要な2.08を大きく下回っている。世間ではこの出生率を増やす方策について論じられることが多いため、アンチテーゼとして本レポートではあえて少子化をポジティブに考えてみようと思う。

 わが国の人口は1世紀足らずの間に2倍以上に膨れ上がった。人口は約1億2700万人、人口密度は1平方キロメートルあたり約340人である。国土の大部分が山地であることを考えれば、実質的な意味での人口密度は他の先進国と比べて傑出して高いと言える。特に大都市における劣悪な居住条件の大きな原因となっているのはこの過剰な人口のせいである。今世紀末には人口は現在の半分程度にまで減少すると予測されているが、増え続けるゴミの問題、解消される気配のない交通渋滞、朝夕のすさまじいラッシュアワー等は、人口が半分になればすべて解決されるといっても過言ではないだろう。

 少子化が問題になるのは、人口が増え続けることを前提に制度が作られているからである。例えば年金について言えば、多くの若い世代が少数の高齢者世代を養う前提で作られている。今後のことを考えてみても、ここ数年のうちに大部分が退職する団塊の世代を養っていけるはずがないと考えるのももっともである。

 そこで、大きく発想の転換をしてみてはどうだろうか。少子化は不可避であるという前提の下、スムーズに移行できるように各種方策を講じていくのである。上記で触れた年金制度に関しては、現行制度に対してさえ破綻すると考える国民が多いのであるから、どこかで思い切って賦課方式から積立方式に変えるのも1つの手だろう。また、もう1つの大きな問題とされる経済規模の縮小に関しても、それが必ずしも国民にとって不幸だとは限らないはずである。スローライフという言葉に代表されるように、豊かさを計る物差しは量から質へと変わりつつある。人口6,000万人ならそれに見合った安定した経済を目指していけばよいだけのことである。それに、経済がボーダーレス化している現況を考えれば、国内の人口減少が企業活動に与える影響もそれほど大きなものではないかもしれない。

 このように、少子化が必ずしも由々しき事態だとは限らない。少子化=悪という前提を頭から捨てた上で、今一度現状について考えてみることも重要なのではないだろうか。

参考 「少子化問題を考える」(財団法人公共政策調査会)