BSC問題で試される日本の政治と日本人のこれから
加藤美幸
 国際獣疫事務局(OIE)の総会は、BSE国際安全基準の緩和を決議し閉幕した。「骨なし牛肉は安全」と、輸出国側には明るい結果となり日本などの輸入国は、充分な安全性の確保を求め条件をつけることを主張し、「(1)BSEに感染または感染の疑いのある牛を除く(2)脳などの特定危険部位に接触していない」の一文を加えることを了承させた。それに先立ち厚生労働省と農林水産省は食品安全委員会に対し、現在のアメリカ・カナダの国内規制及び日本向けの輸出基準によって管理され輸入される場合の牛肉と、日本産の牛肉とのBSEに関するリスクの同等性について諮問している。他国からの輸出再開への圧力や、国内の一部の消費者・事業者の待望論に後押しされて評価はゆるくなるのではと、懸念を抱く国民も多いのではないか。それに対し、食品安全担当大臣である棚橋氏は、「食品安全委員会は政治的雑音を排除し、科学的知見のみに基づいて食の安全を判断する『食の裁判所』のようなもの」と述べている。ならば庶民が考えるほど安易に輸入再開とは行かないはずである。

 2001年に日本で罹患牛が発見されて以来、2005年6月までに19例が報告されている。BSEは単なる家畜の病気ではなく、日本社会に対して多くの苦い教訓を与えるものとなった。OIEで新たな基準が示された今こそ、食に関する全てに対して幅広い視野を持ち、反省とともに新たな政策を掲げるよい機会であると考える。特に次の二点については早急に対応が必要である。

 まず、現在の食料自給率40パーセントに強い危機感を持つと同時に、国内農業復興へ力を注ぐことが第一である。食と農のつながりを強め、安全への信頼度を高めることで地産地消の意識は根付くのではないだろうか。

 次に、食生活の乱れによる生活習慣病の増加で、日本人の健康が深刻な状況に追い込まれているという現実を全ての省庁、政治に携わるもの、そして国民自身が認識し改善へと方向を改めることは緊喫な課題であると考える。厚生労働省が2000年から進めている「健康日本21」の政策が、広く国民に浸透しない要因として、営利を追及した食品産業全般の台頭があげられるのではないか。米の消費が減少し、肉や脂質の多くなった欧米型の食生活が栄養バランスを崩し、輸入などによる供給過剰で日本の食はまさに飽和状態である。それは身体へは肥満や生活習慣病として現れ、食品の大量廃棄は環境へ大きな負荷を与えている。その結果、医療費や環境保全費として国民の生活や日本経済を圧迫する悪の連鎖となっている。

 長寿世界一の地位はやがては過去のものとなるであろう。少子化を憂うことよりまず、今の日本人の心身の健康を生活面、社会面から客観的かつ中立公正に評価し、それに対する政治的な取り組みが真摯であるかないかによって、日本と日本人の将来は大きく左右されると考える。

参考文献:中日新聞2005年5月8日朝刊、平成16年版厚生労働白書