題  与謝野政調会長の講演を聞いて
氏名 深貝 博司
 「私は心の面でも物質的にも貧しくなりたくないと思っている。日本にはやはり一定水準の豊かさが必要だ」・・・本日の講演の中で一番印象に残った言葉である。静かな語り口ではあったが、与謝野政調会長の強い政治信念を感じた。

 社会保障に関しては、少子高齢化の進展の状況を捉えて「心の優しさも必要だが、制度を整える等の物質的な豊かさが必要である」という話に非常に共感できた。

 今の日本では、特に社会福祉に関して言えば、障害者等に対しても分け隔てなく接する優しさを持ち合わせることは表面的には当たり前とされてはいるが、実際には疑問に感じることが多い。

 実際、私自身も社会福祉施設を何度か訪ね、ボランティアを経験したことがあるが、障害者に対していたわりの気持ちで接しているつもりでも、施設のスタッフからは「本当の意味で目線が障害者と同じ状態で接することができていない」との指摘を受けたことがある。

 バリアフリーという言葉が珍しくなくなった昨今ではあるが、真の福祉社会を実現するためには「物質的に当たり前」な豊かな状況を創り出し、万人が何も気にすることなく暮らすことができる社会を実現することが今後の政治に課せられた重要なテーマであると思う。

 経済の面では国際競争力の強化による財政再建を説かれていたが、この問題は今の世の中ではなかなか根が深いものがあると思う。

 地場産業の衰退傾向・若年世代の都会への流出・フリーター等の流動的な労働者の増加など、日本の経済の根幹を揺るがす事態に歯止めをかけない以上、経済競争力は確保できないと考える。

 流動的な労働力が専門スキルの低下を招き、インターネットの爆発的な普及による情報の氾濫も相俟ってアマチュア(一般人)の知識がプロ(専門家)の知識を上回る『逆転現象』がサービス業をはじめとして至る所で見られることや、年配の技術者達が後継ぎのいない状況に対して「私達の技術は確実に中国の若者たちに引き継がれているから大丈夫」と言っている状況を見るとわが国の将来を案じずにはいられない。安い労働力に走った日本の経済のツケが今まさに発生しているのであって、何らかの対策が必要とされる局面を迎えているのだと思う。

 先のWTOの年次報告では、中国の輸出高が日本を抜いて世界第3位になり、米国が対中貿易赤字の改善に苦慮しているその様は、ひと昔前の日本の成長期を見ているようである。

 「日本の富は経済で負けたら終わり」という与謝野政調会長の言葉が具現化してしまうという危機感を常に持ちながら、日本経済の「創造力」「協調力」を養いつつ、「日本でなくてはいけないもの」を経済競争力の基盤として確立することが今の政治には求められているのだと感じた。
以上