| 題 刑務所の過剰収容問題について思うこと |
| 平成17年11月現在の我が国の刑務所収容率は116%という過剰収容状態にあるが、この状況は独居房での2名拘禁の例に見られるように受刑者の精神衛生上非常に問題である。また、過剰収容による受刑者のストレス増加が所内での規律違反による懲罰件数増加の要因になっていることは容易に想像でき、延いては刑務官にも受刑者による暴動を危惧する等の過度な緊張感やストレスを与え、処遇環境の悪化に繋がっていると考えられる。 刑務所の過剰収容問題を解決する手段としては、施設の新増設に目が向きがちであるが、やはり長期的な視点で見た場合、新たな犯罪発生の防止および受刑者の再犯率抑制のための手段を講じることに注力すべきである。受刑者の人権に配慮した収容環境整備は当然必要であるが、前科者が「失業よりは刑務所」と言って仮住居的な感覚で再び戻ってくるようなものであってはならないと思う。 近年の犯罪は多様化しており、新たな犯罪の発生を未然に防止することは容易ではない。しかし、受刑者の再犯率抑制に関して言えば、刑務所が本来の役割である「懲罰と更生」の「更生」の部分をより強く果たすことができるシステムを構築すれば状況の改善を望めるのではないだろうか。 そのためには、更生・矯正プログラムの充実が不可欠であると思う。やはり受刑者には自らの罪に向き合わせることが大切であり、そのためには凶悪犯罪者が被害者や被害者の家族・遺族と接する機会を設けたり、米国に見られるように自身の罪をロールプレイング的に再現させることによって客観的に罪を捉え、反省することを促す方法が有効であると考えられる。被害者感情等を考慮すると実現の障壁も想定されるが、直接的な被害者とではなく類似犯罪の被害者と接する機会を設ける等の工夫をし、受刑者の更正率を高めることができるプログラムを確立することが必要である。更生・矯正プログラムの実施にあたっては、異動が伴う刑務官ではその専門性と一貫性を担保することが困難であるため、矯正専門の民間職員が本業として集中して職務遂行にあたることが望ましい。 また、受刑者、特に未成年受刑者の出所後の就業支援システムを充実させていくことも重要であると思う。出所者を積極的に社会に復帰させる仕組みが存在しないとどうしても再犯率は高くなる。就業により日常生活における充実感を感じ、職業的な倫理観を身に付けることができれば、必ず再犯抑止に有効に作用するはずである。 昨今では、行政改革における国家公務員の定員純減に関して、刑務所等の行刑施設の定員削減が重点分野とされているが、刑務所の管理・運営における保安業務は刑務官が行い、矯正プログラム等のその他の業務に関しては完全に民間委託するという形で公権力に関わる部分のスリム化を徹底すべきであると思う。山口県美祢市に作られるPFI方式の刑務所においては既にこの構想が取り入れられているが、適性水準の矯正教育とコスト削減を実現するために、今後は既存の他施設においても一層の徹底を図っていくことが大切ではないだろうか。 以上 |