「子どもの存在のあり方から見た教育改革とは」
佐治 圭子

 人間の発達には、ただ身体的や形態だけでなく、人格や社会性などあらゆる側面が含まれている。子どもの調和のとれた人間形成を図るためには、その発達段階に応じて達成すべき課題が多々ある。その発達の段階で、教育の場である学校は、家庭と同様に教育だけでなく、社会的機能を持ち、子どもにとって重要な役割を果たしている。その義務教育の現場が大きく変わろうとしている。子どものための教育改革とはどうあるべきか。

 確かに、日本の義務教育は世界最高水準にある。経済の発展とともに、質の高い教育水準を実現してきた。しかし、OECD(経済協力開発機構)が公表した(H17.9.13中日新聞より)加盟三十カ国の教育への支出などを比較した指標によると、日本のGDPに対する教育機関への公的支出の割合は加盟国中最低水準だった。諸外国においては、学力向上を目指し、教育水準を保障する改革が進んでいるのに、日本は三位一体改革に伴い、義務教育費国庫負担制度を廃止、税源移譲を求めている。これは各国の動向とは逆行しているのではないか。

 社会的や経済的な格差が拡大している社会構造にあって、国家発展の基盤である義務教育費国庫負担金を約四千三百億円減の一兆六千七百六十三億円(2006年度予算政府案)としたことで、教育の地域間格差はこれまで以上に拡大するであろう。文部科学省試算によると40の都道府県で財源不足となることも分かっている。これでは、日本国憲法第二十六条【教育を受ける権利、教育の義務、義務教育の無償】を保障できない。教育水準を維持向上することが、国の責務であることから、義務教育費は全額国庫負担とすることが望ましい。

 また、同時に教育の現場も見直していかなければならない。ゆとり教育の見直しについて論じられることは多いが、少子化、核家族化による社会変化は、学校や家庭だけでなく、地域社会でも人間関係の希薄化を招いている。まずは、子どもが遊びや地域の人々とのふれあいを通じて、社会性を身につけることができる環境改善が急務である。子どもへの具体的な働きかけこそ、教育の再生に結び付く。不登校をはじめとする子どもの逸脱問題行動(犯罪行動を含む)、一人ひとりの子どもが見せるSOS(心の声も)のサインを見逃すことなく、家庭、学校、地域および関連機関がそれぞれに努力し、密接に情報交換し、連携、サポートすることで子どもが安心して過ごせる環境づくりができる。

 以上、義務教育費国庫負担制度を維持し、全ての国民に平等に教育を保障しなければならない。また、大人自身の常識や価値観、生き方、また学校(教育)や社会のあり方を問い直しつつ、互いに学び合い支え合いながら、子どものあり方(存在)を認めることが重要であり、日本の学歴社会の変革および個々人の違いを認め合える良好な社会を構築できる教育改革を実現するべきと考える。