「戦後60年、日本人が教わってこなかったこと。」
加藤 美幸

 2005年秋、小学1年生の女児が相次いで誘拐され殺害された。両事件とも金銭の要求などなく、目的は明らかにワイセツ行為であり、当初から殺人も計画されていたのではないかと考えられる。近年、幼い女の子達が性の対象となり、犯罪の被害者となることが顕著化している。親や学校はその防犯対策として、携帯電話やブザーを持たせたり、送り迎えやパトロール、果てはスクールバスまで検討しているところまであるという。しかしながら、被害防止策ばかりを講じさせているこの国の社会の質はどうであろう。表現の自由の旗の下、ネット上に公然と映し出される盗撮写真。子どもの目に触れることにも配慮せず、アダルト向けの商品がコンビニや書店、ビデオショップなどで陳列されているという環境は、海外にはありえぬことという。性犯罪の起きる原因や病巣、社会的要因を問いただし、処罰の甘さや再犯防止対策等を政治が今すぐ、真剣に考え実行に移さなければ、大事な命と輝く未来を失った少女等の無念は晴らされない。幼く無垢な者達に安全で安心な将来が必ず来ることを大人達は約束せねばならない義務があるのである。それこそが、次世代育成のための必須条件である。

 従来より日本社会の風潮として、性に関しては秘め事であり、タブー視され続けてきた経緯がある。成長段階での心や体の変化においても、親でさえ面と向かって話して聞かせる知識や術を持っておらず、あいまいな友人の言葉や興味本位でもっともらしい雑誌を頼りに、多くの若者達は当たり前のように結婚し子どもをもうけてきたのである。「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」とは、“性と生殖に関する健康/権利”と訳され、1994年のカイロ国際人口・開発会議において初めてその概念が示された。そもそもは、世界各地のあらゆる地域の女性が安全な妊娠・出産・避妊・中絶などを自己決定できる権利、すなわち当事者である女性自身が家族計画できることを重要視したものであった。しかし未だに、避妊の知識や協力を得られず望まぬ妊娠をし、劣悪な条件下での出産・子育て、そして間隔をあけず妊娠させられる女性がいるのが現状である。また、開発途上国の少年少女の人身売買や強制売春など, 日本を含む先進国の人間による性的搾取が横行している。

  そして現在、日本国内において重要な社会問題となっているのが、HIV/エイズをはじめとするSTD(性感染症)の蔓延である。先進諸国の中で唯一、エイズの増加を抑えることが出来ない国が日本であり、感染者は20代・30代が7割を占めている。厚生科学審議会のエイズ・性感染症ワーキンググループの審議にも、何よりも教育の必要性をあげ、文科省の性教育に対する消極的な姿勢に苦慮しつつも、厚労省と連携をとり、男女にかかわらず性と生殖の健康を意識し、予防教育を進めるべきという。ぜひ、十分ゆとりある時間をあてて、性は生であり、生殖は愛と思いやりが命へと繋がること、そしてこれらが、誰にも侵害されることがあってはならぬ尊い権利であることをぜひ、次の世代を担う子ども達へ、しっかりと教えていってもらいたい。

参考 : 厚生科学審議会感染症分科会感染症部会
エイズ・性感染症ワーキンググループ第3回議事録