学長よりのごあいさつ

第2期愛知政治大学院7月講座

講師:望月達史氏
平成14年7月13日

プロフィール
 愛知県庁の総務部長をいたしております望月と申します。総務部では、県の予算編成とか、今日お話しさせていただきます市町村合併問題とか、広域行政とか、そういったことをやっております。

 今日は、お手元に資料を二つお配りいたしました。一つは、「そこに住む人がまちをつくる」というパンフレットでございまして、これは県が作っております合併についてのパンフレットです。それからもう一つは、「今後の地方行政の課題」ということで、23ページの資料を用意させていただきました。ごく最近の情報まで含めまして、合併とか、それから市町村の枠組みとか、県の仕事とか、これからどんなふうに変わっていくのか、どういうことが議論されているのかということにつきまして、お話しさせていただきたいと思います。

 まず、お手元のパンフレットの2ページを開いてください。「県内の市町村の移り変わり」とあります。県内の市町村というのは、明治に入りまして市とか町とか村という名前が出てきたのですけれども、明治の初めの頃には、 3,000近くの市町村が県内にはありました。現在は、名古屋市を入れまして県内には88市町村があります。
 そこに合併の歴史があるのですけれども、 100年も前の話ですけれども、明治の大合併で 3,000近くあった町村が一気に 600なり 300に減ったというのは、戸籍の事務とか教育の事務といった新しい仕事を町村が担うことになった。その場合には、何百人ぐらいが当時の能力として適当かということで、大体その規模が決まっていって再編がなされていきました。
 次の昭和の大合併ですけれども、昭和30年前後に3年間かけまして全国で一気に合併が進みました。町村合併促進法という特別の法律ができまして、3年間に限ってこの法律を生かしてやろうということで、全国でされまして、県内でも、200以上の市町村が100余りと、ほぼ現在の体制になりました。このときの基準は、ある意味では非常に分かりやすいのですけれども、新制の中学校を1校運営するのに適切な人口が 8,000人とされまして、 8,000人という数字が法律に書かれまして、それをもとに町村の再編がなされたのです。ですから、昭和の大合併も明治と同じように、新しい中学校を運営するにはどうしたらいいかという、教育行政を新しく役場が担うということから町村の規模がおのずから決められて、それのもとに再編がなされました。
 もちろん、このときも再編されなかった町村もあります。例えば、富山村といった県内の幾つかの町村は、このときにも再編されませんでした。ですから町村施行 100年といった町村も幾つかあります。富山村は今、人口 210人程度、名古屋市が210万人ですので、1万倍の開きが県内の市町村にはあります。もちろん、仕事は若干違いますけれども、基本的には、今の制度上は、名古屋市も人口 200人の富山村も同じ市町村として、議会があって、村長・市長は選挙で選ばれてというように規模は違いますけれども、仕組みは基本的には同じです。

 次に、3ページをお願いいたします。現在、県内には88の市町村があるということをちょっと頭のすみに置いていただきまして、何で今、市町村の合併が必要なのだろうかということについてまとめてあります。「日常生活圏が広がっています」と書いてありますが、歩く時代から自転車の時代、そして車の時代になって、当然、生活圏、生活の範囲が広がっています。広がったのに対応して市町村のエリアも広げて、生活に合わせましょうというのがまず一つです。これは比較的私どもに身近な生活の問題として分かりやすい話かなと思います。

次に、4ページの方にもうちょっと違う理由が書いてあります。これは非常に私ども行政に携わる人間としては、実際的な理由ですし、議会等でも議論になるところです。ここで書いてあることは、大きく三つに分かれます。一つは、市町村の仕事が非常に多様化してきたことが挙げられます。例えば、情報公開とか、行政評価とか、説明責任とか、10年前、15年前とは仕事の質も量もずいぶん変わってきています。できるだけオープンにして、できるだけ説明をして、色々な方と連携をしながら仕事をしていくというのが、今の自治体の有り様になってきています。したがって、多様化する仕事、これが一つ目のポイントだと思います。
 それから二つ目は、地方分権。責任が重くなってきています。これが二つ目のポイントかと思います。2年前に介護保険の仕事が始まって、皆さんもそうでしょうけれども、私どもは今、介護保険の掛金を 2,000円なり 3,000円なり 4,000円なり払っています。そのように、それまで全く考えられなかったような市町村の大きな仕事がどんどんと増えてきていまして、一言で言うならば、「はんこ」の重さが重くなり、大きくなってきている、これが市町村の今の実態です。それが二つ目です。
 それから三つ目は、非常に財政が厳しくなってきているということがあります。県も市町村もそうですけれども、10年前と比べて税収はほとんど伸びていません。ところが、出る方は増えていきますので、県でいいますと、10年前の予算が1兆 9,000億、今年の予算が2兆 3,000億、10年間で 4,000億増えていますけれども、その一方で、税収は1兆円で同じです。ですから、当然、入る方が少なくなって出る方がどんどん出ていきますので、懐具合はどこの市町村も県も厳しくなっています。ですから、貴重な税金をどれだけこれから有効に使っていこうかと考えるときには、「もうちょっと今の市町村の枠組みなり、あるいは県の枠組みなりを考え直して、新しい体制でやって効率化した方がいいのは?」というのが、当然出てくる考え方だと思います。これはもう家計でも行政でも企業でも、基本は同じかと思います。

 三つ申し上げました。多様化する仕事、それから重くなる責任、厳しい財政、この三つが、今の市町村を取り巻く大きなポイントです。そういう状況の中で、今の市町村の枠組みでいいでしょうかという問い掛けであります。
 特に市町村ですけれども、仕事が増えて責任が重くなって、財政も大変だというときに、人件費、事務費(これは広い意味の事務費ですけれども)、それから議会に要する経費を比べてみますと、1万人のところ、5万人のところが仮に10万人になると、当然、経費の重複部分があるわけですので、特に管理部門は完全に重複する部分ですから、減ることになると思います。そういうことで、効率性が求められるはずだということです。厳しい財政状況の中で、増える責任、多様化する仕事をさばいていくには、一つの方策としては、合併をして重複をなくして一緒にやったらどうか、ということです。国も県も市町村も税収が増えない中で今、苦慮しているというのが実態です。

 合併の背景には、生活圏の広域化があり、それに合わせるような市町村の枠組みを考えたらどうかという問題が一つあるのと同時に、これは行政の内部の話として、多様化する仕事、重くなる責任、厳しい財政、こういう中で、税金を効率的に使っていくには、ここはひとつ50年来の枠組みを見直して、もうちょっと手を携えながら近隣の市町村と一緒にやったらどうでしょうかということです。
 そこで、では実際にその市町村の合併というのはどうやって行われるかということですけれども、スタートラインが二つありまして、市町村長、議会の動きがきっかけになる場合と、住民発議、いわゆる住民運動の一環として、住民の方から突き上げて合併を土俵に上げていく場合があり、両方とも制度上は認められております。
 A町、B町が合併する場合には、A町とB町の代表者が集まって合併協議会という協議会をつくることになっています。そこには町長さんや議員さんも入ることになると思いますけれども、議会の議決を経てテーブルをつくる、このテーブルが合併協議会です。それから、これまでにはこういう制度はなかったのですけれども、法律が改正されまして、50分の1以上の署名をもって合併協議会をつくってほしい、あそことつくるべきだということを町長なり市長に請求することが認められています。有権者の50分の1ですので、1万人の町ですと有権者が7千数百人から8千人でしょうから、百数十人程度でしょうか、決して多い数字ではないと思います。この住民発議によって法定協議会ができた例が全国にたくさんあります。県内にもあります。
 いずれにしても、住民の動き、あるいは市町村長、議会の動きがきっかけになりまして、合併協議会で色々な議論がされまして、合併のはんこをつくという手順になります。大体、合併協議会ができてから正式に合併するまでには、1年半から2年かかると言われております。
 合併に際しては、合併協議会というものが必要だ。合併協議会は、関係の市町村の議会の議決がなければできないということになります。それがこの合併の大きなポイントです。つまり、議会を巻き込まなければ、合併は絶対に成り立ちません。

 では、こういう合併につきまして、国とか県はどのように取り組んだり考えているのかということについてご説明いたします。
 合併に当たりましては、市町村の合併の特例に関する法律という、昭和40年にできた法律があります。これは、限時法と言っていますけれども、10年ごとに期限が来て、その都度見直すことになっています。私は10年ちょっと前、この法律の担当をしておりました。当時と今では全く合併に関する環境が違っています。前回の延長は、平成7年4月です。このときに現在の合併特例法になっておりまして、10年ですので、平成17年の3月31日が今の法律の期限になります。政府は「もうこの延長はありません」ということをはっきりと言っています。
 この法律で何が決められているかといいますと、二つあります。一つは、合併する市町村に対する財政的な支援措置、これが一つです。財政的に合併市町村には色々な支援をしますということがこの法律で決められています。それからもう一つは、複数の市町村が一緒になりますので、法律的に調整をしなければならない事項がたくさんあるものですから、そういった合併に伴う特例がたくさんこの法律の中には書かれています。例えば、議員の任期です。A町とB町が合併しますと、当然、議員の残っている任期はほとんどの場合違いますので、それをどう調整するかとか、そういうことが書かれています。
 10年ごとに改正をされてきまして、平成17年の3月末にはこの法律はもうなくなってしまうわけです。ですから、先ほど私は協議会ができてから合併するまでには大体2年ぐらいかかると申し上げました。これから平成17年の3月末までは、あと2年と9か月です。愛知万博が2005年、つまり平成17年の3月25日にテープカットになりますけれども、万博がテープカットされて6日経ってからこの法律が失効します。ですから、「万博のテープカットのときまでに合併しないと、いろんな支援措置や特例は、今のようには受けられません」というわけです。あと2年と9か月ありますけれども、協議会ができてから合併するまで標準的には2年ぐらいですので、年内、あるいは年度内にそういった協議の場をつくるかつくらないかの議論をしないと、物理的になかなか間に合わないというのが、現在の状況です。

 言いたいことは、昭和40年以降、ずっと延長を繰り返してきた法律が、ついにあと2年半でなくなるということが明言されていますので、今年中、あるいは今年度中に合併について議論をしないと、もうチャンスは事実上ない、ということです。ちょうど来年は統一地方選挙がありますが、合併問題というのは一つの争点になり得るものかなと思っています。来年のその選挙の期日、日程を念頭に置きながら、色々な議論を進めていこうというのが、県内各地で前に進んでいるところの共通の関心事です。

 ところで、平成14年3月31日、合併特例法が改正され、住民投票制度が導入されました。市町村長も選挙で選ばれて、議会も選挙で選ばれて、それが車の両輪で議論し合って仕事を進めるというような今の県や市町村の仕組みの中には、住民投票というのはあまり入り得ない仕組みではないかということが今まで言われていました。例えば、高浜市の住民投票条例とか、全国にも幾つか住民投票条例がありますけれども、法律の制度の中で全国的な仕組みとして住民投票の仕組みというのは、基本的にはあまり馴染まないというのがこれまでの議論だったのですけれども、合併の問題の中で初めてこの住民投票の仕組みが制度化されました。
 例えば、住民の皆さんの動きがきっかけになって、全ての合併関係市町村で同じ内容の住民発議があった。A町・B町・C町が一緒になりましょう、一緒になるための法定協議会をつくりましょうという請求があった。それを関係の市町村長さんが議会にかけるのですけれども、議会にかけたら、A町、B町は議決したけれども、C町は協議会は必要ないということで議会が否決をしたとします。その場合の次の手続きですが、町長さんはもう一度議会にかけずに、住民投票をしましょうと言うことができます。町長が言わない場合には、有権者の6分の1以上の署名をもって住民投票を行うことが義務づけられました。住民投票が行われて半分の賛成があれば、議会がノーでもそれがイエスになるとういう仕組みになったのです。議会の議決が住民投票という住民の意思で覆されるというのは、まず考えられなかった制度ですけれども、今回、合併に絡めて、初めて住民投票という仕組みが地方自治の中に制度化されました。まだこれが適用された例は全国でありませんけれども、議会がノーと言ってもイエスになるという仕組みができたということは、とても意義深いことかなと思います。

 それから、財政的な支援措置も、少なくとも私ども財政に携わる者からすると、もう目一杯出しているという感じがします。ですから、国は色々な意味で、出すカードを全部出して合併を進めようとしているわけです。
 ただ、県とか国が強制的に市町村を合併させること、これはできないと思います。あくまで市町村が自発的に合併をするかしないか考える。合併する場合には、もう国や県は精一杯色々な支援をするというのが、今の仕組みです。県が案をつくって、国が案をつくって、市町村が従わない場合には強制的にするというような仕組みには、これはできないと思います。
 今、国はそのような形で、色々な支援をしています。県ですけれども、パンフレットの11、12ページをお願いいたします。愛知県の地図がありまして、点線や実線で市町村をくくってあります。一昨年の12月に県ではこの地図を公表いたしまして、市町村合併のパターンということで、色々なタイプがあるでしょうけれども、『このようなまとまり具合があると思います』というようなことで提示したのがこれです。これは、県が勝手につくったのではなくて、市町村長さんとか市町村の議会の議員さんとか、それから客観的な通勤・通学のデータとか、そういう統計数字をもとにして、まとまるならばこういうまとまりがあり得ますということを示したものです。実際、この組合せに基づきながら、いろんな検討会とか研究会とか、それから先ほど申し上げました正式な議会の議決を経た協議会とかができてきています。

 例を申し上げますと、一つは、渥美半島の田原町、赤羽根町、渥美町と、三つの町で今、議会の議決を経て合併協議会ができて議論が進んでおります。最後に市名の問題が残っておりまして、何という市にするかということで今、議論が進められておりまして、その問題がクリアされると、合併に向けて一気に加速すると思います。来年の1月の合併を目標にして、この3町では議論が進められています。この渥美半島の3町は、人口は6万5,000 人ですけれども、ここにはトヨタの工場などがあり、工業出荷額でいきますと、全国の47都道府県に当てはめれば、大体40番くらいです。農業の生産額も大体40番前後ですから、大体全国の平均的な80万から 100万の県ぐらいの経済力を持った地域です。ですから、人口は6万 5,000人ですけれども、仮に一つの市になれば、経済力は、農業と工業に関して言うならば、小規模県ぐらいの力のある市になるわけです。
それからもう一つ、豊川市、音羽町、一宮町、小坂井町、御津町と、この1市4町で、やはり渥美半島の3町と同じように、議会の議決を経て法定協議会ができて議論が進んでいます。ただ、渥美半島の3町とこの豊川・宝飯地域の違いは、先ほど市町村長、議会の動きがきっかけになる場合と、住民の皆さんの動きがきっかけになる場合と二つあると言いましたけれども、渥美の3町の場合には、市町村長と議会の動きが中心になって協議会ができたケースであり、豊川・宝飯の場合は、住民発議が行われて1市4町の有権者の17%の署名が集まって、その署名をもとにして各市町で協議会をつくるという議決が行われて、協議会がつくられたケースであるということです。ですから、住民の動きをもとにして豊川・宝飯の地域では協議会ができて議論が進んでいます。

 それから、もう一つ申し上げますと、知多半島の東側になりますけれども、碧南市、刈谷市、安城市、知立市、高浜市と、5つの市があります。この5市についても、豊川・宝飯と同じように、住民運動で署名を集めて、5市の合計の有権者の22%の署名が集まって協議会ができようとしています。恐らく、9月の各市の議会に協議会の設置の議案が出てきて、すべての市議会で可決されれば協議会ができて、合併をするかしないかも含めた議論が始まっていくというのが、今の5市の状況です。この5市は、人口が45、6万人でして、40万人〜50万人程度の規模の市の中では、もし仮にその5市が一緒になれば、多分、全国でも一、二を争うような財政力のある、非常に財政的に強い市になると思います。
 いずれにしても、県内各地で、随分地域の実情に応じて違いますけれども、色々な研究会とか協議会とか検討会が始まっております。今年中、あるいは今年度中が、合併についての議論の事実上のいわば正念場の年ですので、各地域ともに、結論はともかく、きっちりと議論をしていただきたいということを、私たち県の立場としても話をさせていただいております。

 最後に、では、2年半後、万博が始まった6日後にこの法律が切れて、その後の市町村の姿に関して、どのような議論が今あるのかということについてお話をします。
 資料の16ページ以降に、「国における市町村合併をめぐる議論」とあって、ここ最近の関係部分について載せてあります。市町村合併を国も推進をしているわけですけれども、それと同時に、じゃあその合併の特例法が切れた後の姿について初めて触れたのが、1年前に出ました骨太の方針です。この骨太の方針では、初めて合併特例法の後の市町村の姿がちょっと出てきております。そこには、「人口数千の団体と数十万の団体が、同じように行政サービスを担うという仕組みを見直して、団体の規模に応じて仕事や責任を変える仕組みを検討する」とあります。先ほど私は、市町村は人口の多い少ないに関係なく、基本的には、首長が選挙で選ばれて、議員も選挙で選ばれて、色々な基本の仕組みは同じだということを申し上げました。しかし、そういうことを見直したらどうかということがここに触れられていると思います。
 次に、先月の25日にやはり骨太の方針の第二弾が閣議決定されています。「改革の受皿となる自治体の基盤強化が不可欠で、合併をさらに積極的にやる」それから「都道府県や市町村の在り方、団体規模等に応じた事務や責任の配分を検討する」とあります。ですから、市町村の規模によって仕事を変えていこうかというのが、今後の検討の方向として示されたわけです。
 それから、県がどういう仕事をするか、県とはどういうものか、それから市町村がどんな仕事をして、どんな仕組みでどのようになっているかということの基本的な仕組みとか決め事は、地方自治法に書いてあるのですけれども、その法律を改正する際には、地方制度調査会という内閣総理大臣の諮問機関に議論をしてもらうことになっています。平成14年の7月1日、つい10日ほど前に、この地方制度調査会の総会が開かれまして、今後、来年の11月を目標として、1年間かけてこういうことを検討するという検討項目が示されました。幾つか大きな論点がありますけれども、「市町村の在り方」とあって、まず頭に「基礎的自治体一般論」とあります。「市町村は、本質的に同じタイプのものであるべきか、違うものがあるとするべきなのか」と、そんなことが論点として上がっています。端的に言うならば、小さな市町村と大きな都市が、同じような仕事のやり方、同じような仕組みというのはどうだろうか、というのが、ここの言いたいことだと思います。合併が進みますと、合併が進んで大きくなった市と、合併がなかなかできずに残った小さな市町村が、おのずから分かれてきます。その合併のなかなか進まなかった小さな市町村が、今までと同じような制度や仕組み、それから今までと同じような仕事で、果たしてこれからの時代にいいのだろうかというのが、ここでの問い掛けなんです。そういうことについて今後1年間議論をして、方向性を出していこうというのが、この地方制度調査会の議論です。
 それから、県の合併、さらには道州制といったもっと大きなブロックで物事を考えていくべきではないかということについても議論が始まろうとしております。ここらあたりは、市町村合併の次の問題かと思いますけれども、いずれにしても、今まで名古屋市も、人口数百人の村も、人口 1万人の町も、基本的に同じ仕組みの中でやっていた仕事が、ちょっとそれではどうかなというような問題提起がされていることと、それから、そういう合併が進んだ後の県の姿についても見直されつつあるということです。

 今の市町村と県の仕組みは、昭和22年に憲法と同時に地方自治法ができて以来、大きな変化はなくこれまで50数年間来たのですけれども、その仕組みが、かなり大きく変わろうとしています。したがって、少なくとも50年間ずっと今の仕組みできた訳ですので、私たちの世代も含めて、今の市町村の体制や県の仕組みはもうあるものだという前提で来ているのですけれども、それが見直されているということは、行政はもちろんですが、影響は大きいと思います。
 機会がありましたら、このパンフレット等をご覧いただきまして、合併についてそれぞれお住まいの市町村がどのような動きをされて、役場の広報とか市の広報にどんな話が載っているか、関心を持ってご覧いただきたいなと思います。
 来年は、統一選がありますし、選挙の年でもあります。市町村合併の問題も含めて、市町村の有り様に、ぜひ関心を持っていただきたいと思っています。
 どうもご静聴ありがとうございました。(拍手)

【司会】 望月様ありがとうございました。
 総務部長の立場から、市町村合併について詳しく、また分かりやすく説明をいただきました。
 それでは、質疑応答に入りたいと思います。短い時間でありますが、たくさんの方々から質問をいただきたいと思います。質問は1人1問、簡潔に、よろしくお願いをしたいと思います。
 それでは、質問のある方、挙手をお願いいたします。
 野中さん、よろしくお願いします。
【質問(野中)】 本日はどうもありがとうございました。
 私は、愛知県豊川市に住んでおります野中といいます。私の個人的なことですが、私の仲人がその合併を望む会の会長をやった関係もありまして、大変えらい目をいたしました。着々と進んでいるかと思っていましたが、内情はやはり反対といいますか、どうもそのままこの話を進めずに潰しちゃおうかというような意見も結構あるみたいで、どういう連中かなと思って見渡しましたら、わが愛すべき自由民主党の議員の先生ばかりでありまして、これは本当に困ったなあと思っておったのですが、今お話があったように、住民の投票でこれは覆せるというのが出たのは、その辺もよく事情を考えられて、賢い役人の皆さんがそういう手を打ってくださったのかなというふうに思っておりました。質問はないです。ありがとうございました。頑張ってください。(拍手)

【司会】 ありがとうございました。
 それでは次の方。
 それでは、鎌田さん。
【質問(鎌田)】 議員の協力なしには難しいというところは、多分に、議員資格がなくなれば我々の生活はどうなるんだということで、議員の方々は、頭では分かっても心では分からないというふうになっています。先ほどの住民投票制度によっての強力な武器があるということだったのですけれども、一番の敵は、失礼ながら、やはり県議会ではなかろうかとふと思うわけです。
 そこで、やはり住民の皆様方が賢くならないことには後押しが難しいという部分に関しては、どのように今、こう言っては何ですけれど、うまく進めていくためには、議員をたなごころにして戦略・戦術を持って進めていくというところ以外には難しかろうと思います。そのあたりの、住民へのアプローチの仕方、広報。例えば公民館で説明する。でも、その説明してもらっては議員は困るというふうな圧力があったりする。このあたりは、役所の方が、心ある人が戦略・戦術を練ってやる以外になかろうかという部分もありますが、そのあたりはどんなふうにお考えでしょうか。
【望月氏】 先ほど住民投票の話にちょっと触れましたけれども、住民投票の仕組みが初めて今回制度化されました。例えばA町とB町が合併しようかというときに、A町とB町の議会の議決を経てまず土俵づくりが始まります。協議会づくりが始まります。協議会をつくるには両方の議会の議決が必要だけれども、協議会をつくるのが反対だというところが出た場合、住民投票の仕組みが出てくるのですが、合併するか否かまで一気に住民投票で決めるのではなくて、協議会をつくることについて議会の議決を覆すことができる。だから、住民投票で過半数がイエスと投票した場合には、議会がノーと言っても合併協議会ができてしまう、ということです。できた後、そこで合併の是非をまた議論するわけですので、例えば、法定協議会の場で合併しないということに結論なったとします。その場合に、じゃあ住民投票をもう一度やってという制度はないのです。そこはやはり間接民主主義と直接民主主義の最後ぶつかるところで、議会制を採っている以上は、そこまではできませんということになるのですけれども、ワンクッションあって、ちょっと手前ですけれども、そういうような仕組みが、できました。
 それから今、どういうふうに説明していくかということのお話がありました。これは、とても難しいことだと思います。合併は20年後、30年後にこの地域がどうなっていくかということを考えて行う話だと思うのです。2年後、3年後、合併しなかったからといって、その町がどんどん奈落の底ということではないと思うのですけれども、20年後、30年後を考えて、貴重な税金を有効に使っていく仕組みを、今のうちに仕込んでおいたらいいのではないかということです。「合併が必要だ、やらなきゃいかんぞ」と言っても、「別に市がやろうが県がやろうが、国がやろうが関係ない。ちゃんとした人がまあまあ普通にやってくれればそれでいいのであって、誰がやろうが関係ないよ」と言われてしまうことがあります。ただ、そのときに一言言えるのは、「地元のことを本当によく思って、真剣に考えるのは、やっぱり地元の人しかいないんだ。だから、なるべく身近な行政の仕事は身近な人がなるべく効率的にできるようにする仕組みを考えなきゃいけない」ということかと思います。でも、それでもなかなか分かっていただけない場合が多いのですが。
 合併は目先のことではなくて、20年後、30年後を見据えたこと。先ほどお話があったような、国の有り様とか県の有り様も含めた問題ですから、かなりそこは熱っぽく話をしていくことが必要ですね。

【司会】 ありがとうございました。
 続きまして質問のある方。
 はい、登内さん、お願いします。
【質問(登内)】 二、三か月前の新聞で読んだのですが、具体的な市町村の名前は忘れてしまって申し訳ないですが、長野県か群馬県の温泉地の市町村が、都市の人に来てもらいたいと、東京の世田谷区と合併したいという記事を読んだのですけれども、飛地の合併が可能かどうかということと、それをやったことによる効果についてちょっとお伺いしたいと思います。
【望月氏】 飛地の合併は、不可能ではありません。できますけれども、例えば、今のお話は、たしか群馬の村が東京と、という話があったと思いますけれども、例えば大都市と山間部の自然が豊富な町が合併する、これは可能です。可能ではありますけれども、実際山間部に住んでいる方が、大都市の行政をどんなふうに具体的に受けられるのかなというときに、物理的な壁というのは大きな壁になるのではないでしょうか。ですから、可能ではありますけれども、例えばお年寄りにとってみれば、「やっぱりそれよりも隣と一緒になってもらった方が、すぐに人が来てくれるね」ということになるのかなというふうには思いますけれども。

【司会】 ありがとうございました。
 次の方。
 三木さん、お願いできますでしょうか。
【質問(三木)】 三木と申します。私は瀬戸市に住んでおるのですが、かつて瀬戸市は、陶磁器産業が繁栄を極めまして、愛知の小江戸と言われるほどの繁栄を極めておったのですが、今、その産業の衰退とともに、市町村合併の話になりますと、隣の尾張旭市、長久手町と2市1町の合併をという話が出てはおるのですけれども、現状を見ますと、どうも尾張旭市からも長久手町からも、「えー、瀬戸と合併するの?」と言われるような状況になっております。そんな感じで、プライドだけはまだ瀬戸市は持っておるものですから、瀬戸市を中心に合併をしたいということで、議論がなかなか進んでおりません。そんな中で、この特例法があと2年10か月で切れる。そうしますと、ちょっと間に合いそうにないなというような、拙速でやってしまえばいいかもしれませんけれども、もし間に合わずにこの特例法が切れた場合、その後の合併も事実上可能なのかどうか、もしその特例措置がないと、実は合併してもメリットがないとか、意味がないとかいうことにはならないでしょうか。特例法の後でも合併は可能なのかどうかお聞きしたいと思います。
【望月氏】 特例法がなくなった後の制度がどうなるか、よく分からないのですけれども、これは私の全く個人的な推測で申し上げるなら、目一杯出している色々な財政的な支援措置はもうなくなると思います。ただ、やはり5年後、10年後でも合併しようというところはどこか出てくるはずですから、必要最小限の手続きについて規定をして、必要最小限の障害をなくすような措置は残ると思います。必要最小限の手続法が残って、淡々と合併をしていくということかな、と思います。

【司会】 続きまして質問の方。
 それでは、こちらの方。
【質問(林)】 林と申します。私も豊川市に住んでおりまして、ちょっと関心があったので質問させていただきたいのですけれども、市町村合併をすることによって重複する業務、職員を減らすことができるというふうに書いてありますけれども、この町村合併によって、仕事を辞めざるを得なくなるという市や町の職員の方のフォローというのはされるのですか。
【望月氏】 職員を合併によって辞めさせること、これはできません。今、県も市町村も大体同じですけれども、団塊の世代が、公務員の定年は60歳ですから、あと7年後、8年後、6年後あたりから大量に退職します。その世代が辞めていく一方で、新規採用は、これはしないわけにはいきませんから、必要最小限にしていけば、おのずから職員数は減っていきます。合併によって人を辞めさせることができるということではありませんし、それはしてはいけないし、それはできない仕組みになっています。

【司会】 ありがとうございます。
 しっかり時間がありますので、どしどし質問してください。
 はい、それでは伊藤さん、お願いできますか。
【質問(伊藤)】 伊藤秀治と申します。よろしくお願いします。
 まず1点質問がありますけれども、合併すると権限が移譲されるとありますけれども、合併しなくても権限は移譲できないものなのでしょうか。もしできるとしたら、どこの範囲内までできるのでしょうか。できないとしたら、なぜできないのかをお教えください。よろしくお願いします。
【望月氏】 愛知県では、名古屋市が政令指定都市、豊橋市、豊田市が中核市、一宮市と春日井市が特例市になっています。人口の規模に応じて、権限が移譲されるようになっています。それから、市と町村の違いは、生活保護の仕事などの福祉の事務が、市は自分の権限でできるのですけれども、町村の場合には、これは県がやると、そういう整理になっている事務が一部にあります。それ以外は、市と町村は基本的に大きな差はありません。町村というのは、町も村も差はありません。
 今、お話があったように、合併をして、例えば人口20万人を超えて特例市になったときには、例えば駅周辺の市街地で何か物を建てようといった場合の開発行為の許可の権限が県から市に移ります。人口が増えればそのようなことになります。特例市が20万、中核市が30万、政令指定都市が70万と言われていますけれども、ただ、面積の要件がありますから、一概には言えないのですが、20万、30万、70万という、そのような一応の目安があります。
 合併をしない場合に、例えば今、人口10万人の都市があって、合併をして20万人になれば特例市になりますから権限が移るのですけれども、10万人のままであった場合にはどうかというのは、基本的に県が持っている権限がいろいろあります。県の権限を県の判断で市に移すことはできます。実際にもうかなり移しておりまして、当然、市町村長が移してほしい、県もそれは別に構いませんということでお互いに意見が一致すれば移していくのですけれども、やはりいろいろ課題があります。例えば、移す以上はやはり財源も必要だ、それから人の手当も要るのでそちらの方も色々なことを考えるべきだとか、そういうような話が当然出てきます。
 ですから、権限移譲と一言で言いますけれども、受け取る以上は責任と人手間も要りますし、お金も要りますから、そういうことについて全部解決しないと権限は移せないというのが実態です。

【司会】 シニア院生に傾いておりますので、2期生の方でどなたか。
 畔柳さん、よろしくお願いいたします。
【質問(畔柳)】 来年4月から中核市に移行される岡崎市から参加しております畔柳です。住民参加型行政が最近叫ばれていますが、行政と住民との合意形成の在り方について、愛知県はどのようにお考えか教えてほしいと思います。
【望月氏】 ものすごく難しい問題で、なかなかうまく答えられないのですけれども、これまでは、県の仕事というのは、これは市町村の仕事も同じですけれども、議会は代表で上がってきた方々ですから、当然、そこで予算や色々な議論をされますから、議会と向き合っていろんな政策形成を行っていくことが大基本だったと思います。これからもそうだとは思うのですけれども、その一方で、やはり住民の方とも接しながら、また色々な事柄をオープンにして公表し、説明をしながら、住民の方のご意見もよく聞いて練っていくという作業も必要になってきていると思います。そういう姿勢を横糸のように色々な仕事に通していくという努力が必要かと思います。なかなか難しいですけれども。苦労はありますけれども、それを地道にやっていくというようなことだと思います。
 その一環として、行政評価と情報公開をセットで今、県も考えています。幾つかの先進例もありますし、県内では豊橋市などが先行して色々なことをやっていますけれども、ここに道路を造ったとか、福祉施設を造りましたとか、色々な仕事があります。その効果をできるだけ定量的に評価をして、こういう評価基準でこういう物差しで評価をする、そういったことをやっていこうとしています。また、それをオープンにしていく考えです。【司会】 ありがとうございます。
 時間が迫ってまいりましたが、最後の1問ということで。
 では辻さん、よろしくお願いいたします。
【質問(辻)】 2年目のシニア院生の辻秀樹と申します。
 地方分権に関しまして、ある知事が言っていたのですけれど、“地方分権UFO論”というのがありまして、よく話題には上がるのですが実態を見たことがないということで、地方分権、さまざまなことが話題にされているのですが、なかなか実現が難しいということで、先ほど道州制について触れられたと思いますが、道州制という理想は地方分権に当たってすごく大きな理想だと思うのですが、これもまた実現がなかなか難しいと思います。国があって、道州庁というものができて、基礎的自治体の市町村という、3分割の構想になっていくのがきっと道州制の構想だと思うのですが、これの作り方ですが、今、市町村合併の動きがあって、基礎的自治体が編成されているので、小さいところがどんどんくっついていって、さらに都道府県もくっついていってというような形で、下から積み上げていく形があると思うのですが、これもまたなかなか各市町村の意思があって、日本国を全国をきれいに区割りをしていくときに、非常に将来の道州制は難しいと思うわけです。かといって、逆に国の方で、例えば北海道と青森、秋田とか、その辺の東北圏はここでくっつきなさいよ、そして市町村もこの辺でくっつきなさいよと、勝手に国の方で上から指示を出していって区割りを決めていくということも、憲法の地方自治の本旨という絡みで非常に難しいと思うのですが、この道州制をつくっていくやり方に絡んで、道州制がどれほどわが国に実現できていくのか、その実現可能性について、もしご見解があればお教え願いたいと思いますので、よろしくお願いします。
【望月氏】 道州制は色々な議論があると思うのですけれども、大きく二つの見方があると思います。一つの見方というのは、いわば県の立場の見方であり、地方の見方だと思いますけれども、市町村は合併が進んでいくとすれば、例えば県内が10の市に分かれたとしますと、例えば岐阜県、三重県、静岡県なんかと一緒になって、もうちょっと広域の県になったらどうか。その広域の県を例えば中部州と言って、県が大きくなったものが州のイメージと、そういった見方が一つあると思います。ちがった見方としては、例えば昔の中部地方建設局、今は中部地方整備局と言っていますけれども、国の出先の機関というのがブロックごとにあります。そういう国の出先の機関のエリアで一つまとめて、いわば県をまたがったそれを中部州と仮に言った場合、国の仕事の観点から見てまとめて、そこの州の知事に国の例えば中部地方建設局の仕事をやってもらうと、そういうことで、いわば国の出先機関的に国が見ていって州と位置づけるという見方があると思います。でもそれはやはり地方分権の立場からすると、いろいろ議論がある考え方だと思います。道州制というのも、寄っている立場によってずいぶん違うと思います。いずれにしても、県の立場で申し上げるならば、州と言おうが道と言おうが、市町村の規模が大きくなって、県の規模もそれに合わせてやはり手を携えて隣県と一緒にやっていきましょうというような、都道府県合併のイメージの延長線に州があると、そのように見ていった方が、地方自治の観点からは適切なのではと思います。

【司会】 活発な質問を本当にありがとうございます。これで質疑応答を終了させていただきたいと思います。
 望月様、本当にありがとうございました。(拍手)
 ここで、望月様より愛知政治大学院第2期生に対して一言いただけませんでしょうか。
【望月氏】 大変活発なご質問やご意見をいただきましてありがとうございました。
最後に一つ申し上げたいのは、やはりできるだけ身近な仕事は身近なことを知っている人が責任を持ってやるのが一番ではないか、それが原点ということです。それを、もうちょっと今の市町村のエリアを広げて貴重な税金を有効に使う仕組みを考えていこうということです。30年後、50年後を見越せば、おのずから行く方向は見えるのかなというように思います。
 いずれにしても、合併はそこに住んでいる人が考えることであって、県とか国が主導的に無理やり引っ張っていくものではありません。ただ、私どもは精一杯、全力で支援をさせていただきます。それぞれのご地元で議論を活発にしていただけたらと、そのように思います。今日は本当にご静聴ありがとうございました。(拍手)
【司会】 どうもありがとうございました。