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2020.01.23

題  「関係人口」施策と展望

 片山さつき先生の講義を聞き、「第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略」の施策に挙げられていた「関係人口」に関する考察を以下に記す。
 総務省によれば(※1)、「関係人口」とは、「移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと」を指す。「その地域にルーツがある者」「ふるさと納税をした者」「これから関わりを持とうとする者」など、様々な形で地域に接点を持つ「観光客以上/定住住民未満」のあらゆる人を指す概念である。
 この「関係人口」について、ローカルジャーナリストの田中輝美氏は(※2)、「日本全体の人口が減る中で、地方自治体間が定住人口という限られたパイの奪い合いを繰り広げることは、疲弊を生むだけであり、不毛」とした上で、多様な価値観や背景から関わる地域を選び、移住定住のようにそれを無理に1つに絞らない、現代のニーズに合った考え方であると指摘する。
 実際、何らかの理由により都市部でなく地方に接点を求める人も増えている。自治体から委嘱されて地域貢献活動を行う「地域おこし協力隊」の参加者は、スタートした2009年度の89人から、2018年度には5,359人まで増加している(※3)。
 筆者はこの「関係人口」の概念について、肯定的な立場である。関わる側が、いきなり移住を迫られるのではなく、自分なりの形で、肯定感を持ちながら地域との関わり方を考えるきっかけとなり、愛着や帰属意識を芽生えさせることもできる。地方との接点を欲するニーズの高まりに伴い、今後その重要性は増していくだろう。
 ただし、政策として実行する上では、施策の成否をどう位置付けるのか、今後しっかりと議論がなされるべきだ。総務省はこの関係人口施策にあたり、モデル事業として2018年度に30団体を採択、予算2.5億円を投入し、今年度は44団体/5.1億円と規模を拡大している。現状、採択された自治体は都市部でのイベント開催などに取り組んでいるが、「助成金がある前提」の施策となると、さもすれば次の予算獲得等のため、本来主役であるはずの消費者を置き去りにして、中央省庁への見栄えや目の前の実績を重視した施策が生まれやすくなってしまわないか。そうなれば、多様性を重視する概念から、中央向きの施策が生まれるという、本末転倒な事態に陥りかねないのではないかと懸念する。
 上記から、筆者はこの関係人口施策について、徒に定量的な指標(例:関係人口〇〇人増加)を設定することは、そぐわないと考える。今後、中長期的に続く有効な施策とするために、モデル事業として参画した自治体との意見交換等をさらに進め、施策自体の評価をどう判断していくべきか、議論を深める必要がある。

参考文献
※1 総務省「『関係人口』ポータルサイト」
   https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/
※2 田中輝美著「関係人口をつくる」(2017年/木楽舎)
※3 総務省HP
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html


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