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2019.11.22

題  単一性国家の限界 -憲法第8章から考える地方自治と地方創生-

1. はじめに

 本レポートは、杉浦正健先生を交えての議論で話の上がった地方自治に関して論じるものである。より具体的には、政府の目指す地方創生を阻んでいるものは何かを考え、それをどの様に更新すればよいかを考察する。

2. 地方自治とは?

 川出ほか(2012)は、地方自治を次のように定義している;国家の領域を地方自治体に区分し、各自治体が一定の範囲内でそれぞれの地域を統治する権限をもっている政治形態。
 地方自治の方法として大別して連邦制と単一制がある。連邦制とは、各州が主権と独自の憲法を有して1つの連邦を構成している。対して、単一制とは、国の憲法に従い中央政府から自治体に権限が付与するという形になっている。川出ほか(2012)は、福祉国家化の進んだ現在では、連邦制国家においても連邦政府の役割が拡大し、連邦と州や自治体の関係も密接になっている一方で、単一制国家でも地方自治体の権限が強化され、自治体外交なども展開されているとしている。この意味で、連邦制国家と単一制国家の違いは相対的なものになっているとしている。
 次になぜ地方自治が必要なのかを見る。川出ほか(2012)によれば理由は2つある。第1に、中央政府の権限を地方政府に委譲することで中央政府と地方政府との間に適切なバランスを作り出し、これにより権力の集中を防ぐことが出来るから。第2に、各地域の政治問題をそれぞれの地域の住民が自らの手で処理すること、すなわち住民自治が実現できるから(地域民主主義の理念)。

3. 地方創生が実現できない理由

 大前(2016)は、地方創生が日本で実現出来ていない理由を憲法第8章にあるとしている。これにより、地方に権限を与えないことで強固な中央集権体制の維持を可能にしている述べている。大前(2016)は、地方自治の根源は2つあるとしている;自立とコミュニティ。
 地方が自立するためには、富と雇用を創出する産業を繁栄させなければならないが、全国一律の産業政策で雇用を創出することは不可能であり、地方が独自の産業政策で付加価値の高い産業を興する必要がある。そして、この地方の自立を支える「人材」は地方のコミュニティが育成する必要がある。

4.所感
 私は、真の地方創生のためには憲法第8章を更新する必要があると思う。川出ほか(2012)は、現在は連邦制と単一制の違いはより相対的なものとなっていると述べているが、根本的な違いがあると思う。それは第8章(より具体的には第94章)が地方には「立法」「行政」「司法」の三権を与えていないことである。地方創生のために産業政策を決める権限を与えるにしても、それは政府か決めた範囲で全国横断的に権限を分権するだけである。本当の地方創生は、三権を認めた地方自治にしか実現できないと考える。しかし、大前(2016)の議論だけだと地方格差が大きくなる可能性があるので、先進国として福祉性のある国家を目指すのであれば政府に求められる新しい役割も考えなければならない。(1209字)

参考文献

大前研一「君は憲法第8章を読んだか」、小学館、2016年、73-90ページ。

川出良枝ほか 「政治学」、東京大学出版会、2012年、156-166ページ。


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