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2019.09.17

松本議員の講演を受けて ~大衆と民主主義の「バグ」~

 松本議員の講演でも話題に上った「統帥権干犯」。松本議員がおっしゃったように、この統帥権干犯問題を持ちだしたのは、軍人ではなく選挙で選ばれた政友会の犬養毅や鳩山一郎である。当時の政友会は、予備役軍人団体である、在郷軍人会が有力支持団体と化しており、「政友会の親軍化」が進んでいた影響でもあった。この事件以降、軍部が台頭し、日本の政党政治は弱体化した。犬養毅は五・一五事件により暗殺され、鳩山一郎は戦後の総理就任を目前にして、GHQからこの事件を追及されて公職追放と、皮肉な結果となった。
 野党が人気取りとして、軽々に動いた結果、軍部の台頭が決定的となったこの事件だが、この問題の根本は、野党が攻撃材料として諸刃の剣を用いたことではない。この件の根本的問題点は、ずばり「普通選挙法」と言えるだろう。
普通選挙法によって制限選挙が解除され、選挙つまりは国政が大衆のものとなった。在郷軍人会の会員数は300万人であり、当時の有権者数は1281万2895人であるので、有権者の約25%が在郷軍人会の会員ということになる。直近の2017年の衆院選と比較すると、有権者数1億609万1229人に対し、自民党の党員・党友数は106万8560人であり、有権者数の1%程度しかいない。当時の在郷軍人会がどれだけ「大衆」だったかがわかるだろう。当時も投票先の統制はされていないが、第18回衆院選(1932年)で政友会が多数派となっている。
 大正デモクラシーによって衆議院議員選挙法が全面改正され、いわゆる「普通選挙法」となったのだが、この時から政治の「大衆化」がすでに始まっていたのだ。政権が批判されることに熱を感じ、甘言に惑わされ、今の有権者が苦しみを受ける選択肢を受け入れず、未来に負債を押し付ける。そして目先の政権を攻撃する。この「未来のために今の有権者が苦しむことを許さない」。これが「民主主義のバグ」だ。このバグはつい最近も起きていた。それが先の参院選で是非が問われた年金問題だ。年金問題は1960年代から将来が危ないと言われ続け、そういった書籍も出版されてきたのに、国民は「俺が負担するなんてありえない」と逃げ、政治家も「年金が危ないのはわかっているが負担を強いれば有権者は許さない」と逃げてきた問題だ。だが今回の参院選では消費増税を表に出して戦った自民党が、過半数を獲得したことで増税が許容され、年金問題について有権者が「これ以上、未来へ負担を強いてはならない」と覚悟を決めた形となった。ここにこの「未来のために今の有権者が苦しむことを許さない」というのが民主主義の「欠陥」ではなく民主主義の「バグ」だということがみてとれるだろう。有権者がしっかりと考えて決断をすれば、このバグは無くなるのだ。民主主義は決して大衆に優しい制度ではない。時として有権者は、自分自身が「政治家」として責任を持って決断せねばならないのだ。
-出典-
・「近代日本の軍部と政治」 著者:永井和 出版:思文閣
・「自民、党員5年連続増」 -日本経済新聞(電子版)- 2018年3月5日


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